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わたしのブログ

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続きです。

その日が来た。上海第一陸軍病院院長軍医大佐の訓示があった。
「まことに残念ながらお前たちは内地大阪陸軍病院に送る。地方に帰ったら、除隊したら身体に気をつけてますます励むように、長い間、ご苦労であった。右命令する。」
 汽車で上海を出発。蘇州を通り南京から揚子江を渡りさい済南、天津、山海関、ここから満州である。実に長いたびであった。ここまで1200キロくらいある。
 車内の患者は皆内地の話に花を咲かせていた頃、突然憲兵がやってきて、「この列車は錦県にて打ち切る。」「関釜連絡船の安全輸送期し難く」と言う理由らしい。「ゆえに皆、在満地区にて治療するように命令変更する。」「あまり話が上手すぎる。」と思った。
 錦県について、駅前で本院と分院行きとに分けられた。私は良良屯にある分院である。18年に満州に来てこの駅で極2909部隊に入隊したのも、痔の手術を受けたのもここであった。今度は内科5病棟だ。
 内科事務所の前で「ヤァー片山じゃないか。」と声をかけた衛生兵が私の顔を見て「また来たのか。奇遇だなぁ。おお、お前一等兵になったのか。」と、良く見たら経理室の上等兵だった。今は兵長になっている。「あの経理の?」と言ったら手を上げて「そうだ。そうだ。落ち着いたら事務所に明日日に来い。内科だ。待っているぞ。」と笑いながら言った。


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